噴火発生時の鹿児島・桜島
=7月24日夜(国交省大隅河川国道事務所の動画から)
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鹿児島県の桜島で7月24日、爆発的噴火が起きて噴石が火口から2・5キロ先まで飛んだ。
これを受けて気象庁が噴火警戒で最高のレベル5の「避難」指示を出す一幕があった。
全国の火山でレベル5の適用は平成27年の口永良部島に続く2例目で桜島では初の事態だ。
今後の活動見通しについて気象庁は「山体膨張の規模は小さく、大規模な噴火は想定していない」としている。
そのようになってほしいが、今世紀の桜島は平成21年から活動を高めている。同年の噴火回数は755回だった。前年の10倍近くもの急増だった。
その後、27年までの6年間中、5年間は毎年、千回を超す記録的な頻度の噴火を続けていた。
153回に低下した28年以降は500回を超えることがなくなり、昨年は145回で、今年は6月までで15回と低調だっただけに驚きは大きい。
桜島には大正3(1914)年に大噴火を起こし、溶岩流で大隅半島と陸続きになった歴史がある。約60人の犠牲者を出した災害を忘れてはならない。
鹿児島湾の海底下にある主マグマだまりは大正噴火で縮小したが、その後の約100年間でフルチャージに近づいたと推定されている。現在の桜島は、そうした段階に入っているのだ。
近年の山頂火口からの噴火は、爆発的なものも含めて桜島の活動では小規模噴火に属するものであるとされる。
大正3年のような大規模噴火は、山腹噴火になりやすいことを専門家は警戒する。大量のマグマが地下から殺到すると既存の火道では間に合わず、新たな噴出ルートを探すマグマは、上昇エネルギーが少なくて済む中腹部に突破口を求めることになるという。
桜島には京大の観測所があり、鹿児島市や県の防災部署との緊密な連携が期待されるが、どの方面から溶岩が流出するか分からず、山腹には集落もあるので被害防止の難度が高い。
日本列島は環太平洋造山帯に位置し、しかも活動期に入っている。だが、火山学者や地震学者の数は少なく、陣容は心もとない。富士山も南海トラフ地震に連動しかねない。伊豆大島も要注意だ。地震火山の観測と防災研究体制の拡充は待ったなしだ。
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2022年7月28日付産経新聞【主張】を転載しています